事業内容

研究成果報告会

贈呈式に先立ち、東京慈恵会医科大学解剖学講座 岡部正隆 教授による「脊椎動物上陸の進化発生学的研究」をテーマとした第3回研究成果報告会が開催され、成果報告と活発な質疑応答が行われました。

報告会レポート

報告会では、開会挨拶に続き、自然科学部門堀田選考委員長より岡部教授の紹介後、同教授による研究成果報告会が約1時間半行われました。

岡部先生報告要旨 

岡部先生報告
岡部先生報告
 いまから4億年の昔、魚のような形をした我々の祖先はゆっくりその姿を変えて陸地という新天地を目指しました。水中と陸上ではまったく生活環境が異なります。我々の祖先は、この環境変化に耐える身体をどのようにして手にいれてきたのでしょうか。
 このような進化の研究は、化石を中心とした古生物学的手法に頼らざるを得ませんが、脊椎動物の上陸は太古の物語であり、化石の発見も極めて稀です。そこで私たちは、上陸に際して脊椎動物の形態変化がどのように行われてきたのかを、ゲノム情報の変化とこれによる発生プログラムの変化として捉え、遺伝情報が利用可能で発生研究が可能な現存の様々な生きものを用いて、かつての形態変化について推測することを試みています。
 筋肉の収縮や神経の活動には血中のカルシウム濃度が一定に保たれていることが重要です。魚の時代は周りの水からカルシウムを摂取すればよかったのですが、陸に上がると骨に蓄えたカルシウムを必要に応じて溶かしだして血中濃度を維持せねばなりません。 報告会風景
報告会風景
これを司る副甲状腺は魚類には存在せず、四肢動物が上陸の際に作り出したと考えられます。副甲状腺に発現するGcm2遺伝子をマーカーにその起源を調べていくと、どうやら副甲状腺は、魚でカルシウムを吸収する鰓(えら)が頸の中に閉じ込められてできたことがわかりました。血中のカルシウム濃度を計りホルモンを放出するだけであれば、体のどこにあってもいいわけですが、なるほど鰓があった頸に副甲状腺が存在することも納得がいきます。陸に上がる際に我々の祖先は鰓を不要になったものとして捨てず、むしろ陸上で生き抜くための新しい器官に進化させていたことがわかったのです。生物進化は実に巧みです。

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